20歳以上60歳未満の期間工が退職して、すぐに次の会社で働かない場合は、原則として厚生年金から国民年金への切り替えが必要です。
しかし、退職して収入がなくなった状態で、毎月の国民年金保険料を支払うのは簡単ではありません。
そのようなときに利用できるのが、失業による国民年金保険料の特例免除です。
失業特例では、退職した本人の前年所得を0円として審査してもらえます。全額免除が認められた場合は保険料を支払う必要がなく、その期間についても、将来受け取る老齢基礎年金額に全額納付した場合の2分の1が反映されます。
ただし、失業すれば誰でも必ず全額免除になるわけではありません。この記事では、失業特例の仕組みや所得税との違い、申請方法まで分かりやすく解説します。
期間工を退職したら国民年金への切り替えが必要
期間工として働いている間は、給料から厚生年金保険料が引かれています。
20歳以上60歳未満の人が退職して厚生年金から外れ、すぐに次の会社へ就職しない場合は、原則として国民年金の第1号被保険者へ切り替えなければなりません。
国民年金への加入手続きは、住所地の市区町村役場またはマイナポータルから行うのが基本です。
保険料の免除・納付猶予申請は、市区町村役場、年金事務所、郵送、マイナポータルで受け付けています。市区町村役場なら、国民年金への加入と免除申請をまとめて相談できます。
なお、退職後に会社員の配偶者の扶養へ入る場合は、第1号被保険者ではなく第3号被保険者の手続きになります。
失業手当を受給中は配偶者の扶養に入れないことがある
失業手当は非課税であり、国民年金の失業特例の所得審査にも通常は影響しません。
しかし、健康保険の扶養を判定するときは、失業手当も収入として扱われます。
雇用保険の基本手当日額が3,611円以下であれば収入要件を満たす可能性がありますが、3,612円以上の基本手当の支給が始まった場合は、原則として配偶者の健康保険の扶養から外れる手続きが必要です。
健康保険の扶養から外れると、国民年金の第3号被保険者にもなれないため、第1号被保険者への切り替えが必要になります。
7日間の待期期間や給付制限中は、ほかに収入がなく要件を満たしていれば扶養へ入れる可能性があります。失業手当を申請する場合は、配偶者が加入している健康保険にも確認しておきましょう。
支払いが難しい場合は失業による特例免除を申請できる
国民年金には、所得が少なく保険料を支払うことが難しい人を対象とした、保険料の免除・納付猶予制度があります。
さらに、会社を退職して失業した人には「失業等による特例免除」が用意されています。
この制度を利用すると、退職した本人については前年所得にかかわらず免除・納付猶予の審査を受けられます。期間満了で期間工を退職した人も、離職票などで失業の事実を確認できれば申請可能です。
自己都合退職だから利用できないという制度ではありません。保険料の支払いが難しい場合は、未納のまま放置せず申請してみましょう。
いつの保険料から免除されるのか
失業特例は制度上、失業した日の属する月の前月から対象になります。ここでいう失業した日とは、離職日の翌日です。
ただし、実際に免除されるのは、国民年金第1号被保険者となり、国民年金保険料が発生する月からです。
例えば8月31日に退職した場合は、離職日の翌日である9月1日が失業した日になります。制度上は8月から特例の対象になりますが、8月分までは厚生年金に加入しているため、国民年金保険料は発生していません。
この場合、実際に免除申請の対象となる国民年金保険料は9月分からです。
なぜ前年所得を0円として審査してもらえるのか
通常の国民年金保険料の免除審査では、現在の収入ではなく前年の所得が使われます。
例えば、前年に期間工として給与収入が500万円あった人が退職した場合、次のような状態になります。
- 前年は期間工として働いていたため、給与収入500万円
- 現在は退職して失業中のため、収入0円
通常どおり前年所得だけで審査すると、現在は収入がないのに「前年の所得が高いため免除できない」と判断されてしまいます。
そこで失業特例では、現在の支払い能力を考慮するため、退職した本人の前年所得を0円として審査します。
所得税や住民税まで0円になるわけではない
ここは間違えやすいところですが、国民年金の免除審査で前年所得が0円扱いになっても、所得税や住民税が免除されるわけではありません。
例えば、2026年1月から8月まで働いて300万円の給与を受け取ってから退職した場合、それぞれの制度では次のように扱われます。
| 制度 | 退職前に受け取った給与の扱い |
|---|---|
| 国民年金の失業特例 | 免除審査では退職した本人の前年所得を0円として審査 |
| 所得税 | 1月1日から12月31日までに実際に得た所得をもとに計算 |
| 住民税 | 原則として前年の実際の所得をもとに計算 |
| 雇用保険の失業等給付 | 非課税 |
つまり、期間工として実際に受け取った給料に対する税金が消えるわけではありません。
特に住民税は前年の所得をもとに計算されるため、退職して収入がなくなった後も支払いが続くことがあります。退職後の生活費を考えるときは、国民年金だけでなく住民税の支払いも忘れないようにしましょう。
年の途中で退職すると所得税が戻る可能性がある
所得税は免除されませんが、年の途中で退職して年末まで再就職しなかった場合は、確定申告によって所得税が戻ってくる可能性があります。
毎月の給料から引かれている所得税は概算です。通常は年末調整で正しい税額に精算しますが、年の途中で退職すると、一部の例外を除いて勤務先では年末調整を受けられません。
そのため、所得税を納めすぎている場合は、翌年に確定申告をすることで還付を受けられます。
年内に別の会社へ転職した場合は、前の会社から受け取った源泉徴収票を新しい勤務先へ提出すれば、まとめて年末調整してもらえるのが一般的です。
全額免除なら保険料0円でも年金額に2分の1が反映される
失業特例によって全額免除が認められた場合、その期間の国民年金保険料を支払う必要はありません。
さらに、全額免除期間は老齢基礎年金の受給資格期間に含まれ、将来の老齢基礎年金額には、保険料を全額納付した場合の2分の1が反映されます。
「保険料を支払っていないのに、半分支払ったような形で年金額に反映される」ということです。
また、免除が承認された期間は、一定の要件を満たせば障害基礎年金や遺族基礎年金の受給資格期間にも算入されます。
手続きをせず未納のまま放置すると、老齢基礎年金額に反映されないだけでなく、万が一の病気やけがの際に障害基礎年金を受け取れない可能性があります。
失業しても必ず全額免除になるわけではない
失業特例では、退職した本人の前年所得は0円として審査されます。
しかし、全額免除の審査では本人だけでなく、配偶者と世帯主の所得も確認されます。
(扶養親族等の数+1)×35万円+32万円
扶養親族がいない人の場合は、所得67万円以下が基準になります。
ここでいう所得は、給料として受け取った年収そのものではなく、給与収入から給与所得控除などを差し引いた後の金額です。また、本人・配偶者・世帯主それぞれについて、その人自身の扶養親族の数を使って判定します。
失業特例を利用する本人は前年所得を0円として審査されますが、配偶者と世帯主は原則として実際の前年所得で審査されます。
そのため、次のような違いがあります。
独身で自分が世帯主の場合
独身で住民票上も自分が世帯主の場合は、基本的に審査対象となるのは自分だけです。
失業特例によって自分の前年所得が0円として扱われるため、全額免除が認められる可能性は高くなります。
ただし、最終的な結果は日本年金機構の審査によって決まるため、「失業すれば必ず全額免除」とは断定できません。
実家に戻り、親が世帯主の場合
退職後に実家へ戻り、収入のある親と同一世帯になった場合は注意が必要です。
本人の前年所得が0円として扱われても、世帯主である親の所得が基準を超えていると、全額免除が認められない可能性があります。
世帯主である親自身も失業している場合は、親についても失業特例を適用できる可能性があります。
ただし、50歳未満の人が利用できる納付猶予制度では、世帯主の所得は審査対象になりません。本人と配偶者の所得が基準以下なら、全額免除が認められなくても納付猶予になる可能性があります。
納付猶予期間は年金の受給資格期間には含まれますが、追納しない限り老齢基礎年金額には反映されません。全額免除との違いには注意しましょう。
配偶者に所得がある場合
配偶者がいる場合は、別世帯であっても配偶者の所得が審査されます。
配偶者の所得が基準を超えている場合は、本人が失業中でも免除や納付猶予が認められないことがあります。
ただし、配偶者自身も失業している場合は、配偶者についても前年所得にかかわらず失業特例の審査を受けられる可能性があります。夫婦ともに退職した場合は、申請時に夫婦それぞれの失業を証明できる書類を用意しましょう。
一部免除になった場合は残りの保険料を支払う
審査の結果、全額免除ではなく、一部免除が認められることもあります。
2026年度の一部免除後に支払う保険料は、次のとおりです。
| 免除内容 | 支払う保険料(月額) |
|---|---|
| 4分の3免除 | 4,480円 |
| 半額免除 | 8,960円 |
| 4分の1免除 | 13,440円 |
一部免除が認められても、免除されなかった残りの保険料は支払わなければなりません。
残りの保険料を支払わないと、その月は免除期間として扱われず未納になります。老齢基礎年金額への反映だけでなく、障害基礎年金や遺族基礎年金の受給資格にも影響する可能性があるため、納付書が届いたら忘れずに支払いましょう。
失業特例の申請に必要なもの
失業による特例免除を申請する場合は、主に次のものを用意します。
- 国民年金保険料免除・納付猶予申請書
- 基礎年金番号またはマイナンバーが分かるもの
- 雇用保険被保険者離職票のコピー
離職票の代わりに、ハローワークから交付される雇用保険受給資格者証や雇用保険受給資格通知のコピーなどを使用することもできます。
申請書は年金事務所や市区町村の国民年金担当窓口でもらえるほか、日本年金機構の公式サイトからダウンロードできます。
現在はマイナンバーカードがあれば、マイナポータルから電子申請することも可能です。
納付書が届くまで待つ必要はない
国民年金への切り替え手続きをすると、通常は約2週間後に納付書が送られてきます。
しかし、免除を申請するために納付書が届くまで待つ必要はありません。申請書を公式サイトからダウンロードするか、窓口やマイナポータルから早めに申請できます。
免除の審査結果が出るまでには、通常約2か月かかります。その間に納付書や納付案内が届く場合がありますが、申請中であれば審査結果を待ちましょう。
免除申請は、原則として申請時点から2年1か月前までさかのぼって行えます。
ただし、申請が遅れると、申請前に病気やけがをした場合に障害基礎年金の要件を満たせなくなる可能性があります。さかのぼって申請できるからと放置せず、退職後はできるだけ早く手続きするのがおすすめです。
7月をまたいで失業が続く場合は再申請が必要
国民年金保険料の免除制度では、7月から翌年6月までが1年度として扱われます。
失業特例による免除を受けた人は自動継続の対象外となるため、7月をまたいで失業状態が続く場合は、翌年度分を改めて申請する必要があります。
例えば6月に申請して免除が認められても、7月以降の保険料まで自動的に免除されるわけではありません。
免除された保険料は後から追納できる
免除や納付猶予が認められた保険料は、10年以内であれば後から追納できます。
再就職して生活に余裕ができた後に追納すれば、将来受け取る老齢基礎年金額を満額に近づけられます。
ただし、免除・猶予を受けた期間の翌年度から数えて3年度目以降に追納すると、当時の保険料に加算額が上乗せされます。追納する場合は、余裕ができた段階で早めに検討するとよいでしょう。
まとめ
20歳以上60歳未満の期間工が退職してすぐに再就職しない場合は、原則として国民年金への切り替えが必要です。
収入がなく保険料の支払いが難しい場合は、離職票などを使って失業による特例免除を申請できます。
失業特例では退職した本人の前年所得を0円として審査してもらえますが、実際の所得が消えるわけではありません。退職前の給料に対する所得税や住民税は、通常どおり実際の所得をもとに計算されます。
また、世帯主や配偶者の所得によっては、失業中でも全額免除が認められない場合があります。ただし、世帯主や配偶者自身も失業していれば、その人についても失業特例を適用できる可能性があります。
それでも、全額免除や一部免除、納付猶予のいずれかが認められる可能性はあります。
一部免除になった場合は、免除されなかった残りの保険料を支払わなければ未納扱いになります。審査結果を確認し、必要な保険料は忘れずに支払いましょう。
